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コラム会報誌研究発表

著書紹介|疼痛治療における貼付剤の過去・現在・未来

監修 獨協医科大学医学部麻酔科学講座主任教授 山口重樹先生
執筆 藤井宏一准教授 高薄敏史准教授 白川賢宗講師 木村嘉之准教授
出版 メディカルレビュー社

本書は、監修した山口重樹先生(9期生)が序文で書いているように、貼付剤による痛み治療の可能性を再考するための参考書である。

日本人は昔から貼るという治療が好きである。明治生まれだった祖母は頭痛がすると梅干しをこめかみに貼り、喉が痛ければネギを巻き、私に熱が出れば額に冷たいタオルを乗せた。おそらく薬効という程の物は無かったと思うが、その行為そのものによって多少(なんとなく)緩和したような気がしたものである。

第1章は貼付剤の歴史を解説するが、冒頭から読者の興味をグイグイと惹きつける内容である。紀元前3000年の古代メソポタミアの時代から貼付剤が存在していたという事にも驚かされるが、本邦でも平安時代の医学書である『医心方』には貼付剤について記載されている。近代医学においては、サリチル酸、第二世代のNSAIDsの誕生、さらにはオピオイド製剤の登場まで触れられており、鎮痛剤の歴史に対する理解も進む。

第2章では貼付剤の基礎が分かりやすい分類表と共に紹介されている。開業医である私は、「腰が痛いから湿布を下さい」という要求に対して、あまりにも適当に湿布剤を処方していたなと反省しきりとなった章であった。

第3章「がん疼痛と貼付剤」と第4章「慢性疼痛と貼付剤」では各製剤の種類、特徴から症例提示まで合理的に記されている。また各章末には参考文献が載せてあり、検索もあって検索もしやすい構成になっている。第3章と第4章は、がん患者の疼痛に対する使用例も示してあり、やや専門的であるが、在宅医療に取り組む開業医には参考になる内容でる。

高齢化社会となり、疼痛問題は常に近くに存在し、診療科を問わず疼痛に対応する場面は多いと思う。本書は非常にコンパクトな形状であるが内容密度は濃く、手元に置いて参考にするのに丁度良い仕様となっている。是非本書を手に取って頂き日々の診療に役立てて頂きたいと思う。


そして本書が皆様の役立った時に、本書としての未来が開かれる。
文責 千木良